平成11年3月 財団法人 航空宇宙技術振興財団

平成10年度 航空宇宙技術研究所委託業務研究

「航空機のクラッシュ事故データに関する調査結果報告書」より抜粋


1.機体型名:ボーイング式747SR−100型JA8119

2.所属運行会社   :日本航空株式会社

3.事故年月日:昭和53年6月2日

  場所:大阪国際空港

  事故の概要:

    日本航空株式会社所属ボーイング式747SR−100型JA8119は、同社の定期115便(東京−大阪)として昭和53年6月2日15時01分頃大阪国際空港に着陸の際、後部胴体の下部を滑走路に接触し機体は中破したが、火災は発生しなかった。

    本事故により旅客2名が重傷を負った。

  原因:

    本事故は、機長の接地時における返し操作が適切でなかったためバルーニングし、当該バルーニングから回復時に航空機関士がスピードブレーキをアームにしようとしアーム位置を越えてスピードブレーキを作動させたため、揚力が急速に減少し落下着地したことによるものと推定される。

4.クラッシュ現場の種類

    標高12メートル、アスファルト・コンクリート舗装の滑走路上

5.クラッシュ時の速度と姿勢等

    事故機は、機首上げ約9°の姿勢角、速度126ノットで接地した後バルーニングし、その約8秒後に、機首上げ約13°の姿勢角、速度約120ノットで後部胴体下部から落下接地したものと推定される。付図1参照。

6.クラッシュ時の重量と重心

    重量:464,800ポンド

    重心:17.7%MAC

7.クラッシュ時の衝撃データ:付図1参照

8.構造の破壊状況(付図3、写真1〜2参照)

8.1 損壊の程度:中破

8.2 各部の損壊の状況

 (1)胴体

   @後部胴体下部(ステーション2100から2792まで)外板に擦り傷及びしわ並びに縦通材及びフレームに湾曲及び変形を生じた。

 (2)降着装置

   @左右の主着陸装置に傷痕が生じた。

8.3 損壊部の詳細

    同機は、日本航空により同社整備規定のハードランディング・インスペクション・フェーズ1及びフェーズ2の一部に従って点検され、損壊部についてはさらに詳細な点検が実施された。主な損壊状況は次のとおりであった。

 (1)水平安定板駆動装置

   @BS2460及び2484のフレーム下半分コード及びウェブ:損傷

   ABS2484〜2598下側シヤー・パネル:約2.1メートルにわたり亀裂

 (2)水平安定板ヒンジ支持構造隔壁(BS2598)

    下側コード断面及びウェブ:破損

 (3)後部圧力隔壁ドーム(4〜8時)ウェブ:変形

 (4)BS2160、2280、2300及び2340フレーム下側断面:変形及び/又は亀

 (5)BS2377、2397及び2412フレーム右下側部:変形

 (6)BS2436、2506〜2577フレーム下側断面:変形及び亀裂

 (7)BS2618、2638及び2658フレーム下側断面:変形及び亀裂

 (8)APUドア・フレーム両側:亀裂

 (9)テール・コーン後方断面(BS2742〜2792)下側フレーム及び外板:破損

(10)BS2658隔壁下側断面:破損

(11)後方ドレイン・マスト:破損

(12)APUバッテリ室ドアー:変形

(13)BS2100〜2792胴体下面外板:すり傷及び摩滅

(14)両ウィング・ギヤ・イコライザ・ロッドとトラック・ビーム:接触により損傷

   両ウイング・ギヤ・イコライザ・ロッドとショック・ストラット・インナ・シリンダ下部:接触により損傷

(15)APU後方マウント支持ブラケット:変形

8.4 航空機以外の物件の損壊

    なし

9.火災の発生状況

    火災は発生しなかった。

10.搭乗者の状況

10.1 乗客及び乗員の死傷の状況

    乗客379名、乗組員15名の合計394名中、乗客2名が重傷を負った。

10.2 乗客の死亡原因

    死者はなかった。

10.3 負傷者の負傷の状況

    重傷を負った乗客2名のうち、1名は第8骨椎圧迫骨折、他の1名は頭部腰部打撲であった。

11.搭乗者の生存の可能性に関する評価

    死者はなかた。

12.クラッシュから最終段階に至る糧の予想されたシナリオ

    事故機は、滑走路32L末端から約320メートルの接地点標識付近に、速度126ノット、機首上げ約9°の姿勢角で設置した後浮上し、最初の接地点からさらに約460メートル先の地点に速度約120ノットで後部胴体下部から滑走路面に落下接触し、同部を損傷したものと推定される。なお、この時点における姿勢角はDFDRには記録されていないが、機体の損傷状況の調査及びその前後の姿勢角の変化から、同機は約13°の機首上げであったものと認められる。

13.その他の一般的な事項

    特になし。