3.CVR全文及びヒアリング
Sep. 26 2005 UPDATE
3.1 CVR全文
ヒアリングの検証はおいておき、とりあえずCVRの全文をここに掲載したいと想います。秒単位で書いてあり結構長いので、10に分割し、別ウィンドウに表示するようにしました。一度目を通された後で、詳しい内容に入りたいと想います。
18:24:10 〜 爆発音
18:27:31 〜 油圧消失
18:30:27 〜 酸素マスク
18:34:06 〜 カンパニー無線
18:37:51 〜 「頭下げろ」
18:41:11 〜 交錯
18:44:21 〜 「これはだめかもわからんね」
18:47:29 〜 尾根
18:50:47 〜 パワーコントロール
18:53:58 〜 墜落
見ていただければわかると想いますが、表の縦軸は時間をあらわしています。
表の一番左の列で黄色の背景の部分は、1985年8月27日の中間報告で発表された内容です。実際には英語で会話されている部分を日本語で表記していたり、不備が多いものとなっております。これは「航空情報」の1985年の11月号から抜粋しました。
左から二番目の列は、1987年6月19日提出の事故調査報告書からの抜粋したものです。見やすく分かりやすいので別のHPから勝手にお借りしました(すみません)。CAPは機長、COPは副操縦士、F/Eは航空機関士、STWはスチュワーデスの声を表記したもので、まさにCVRの内容を表記しています。基本的に、事故調査報告書の通りになっています。
左から三番目の列は、管制(ACC,APC)、他機や横田基地の声を表記したものです。ACCは管制東京(東京コントロール)を、APCは東京アプローチを表しています。1987年6月19日提出の事故調査報告書や別のHPを参考にしており、日本語訳を括弧内に表記しました(資料が少ないため殆ど日本語訳です)。
一番右の列で背景がピンク色の部分は、私がヒアリングしたCVRの内容です。「事故調査報告書と異なる内容」だと感じた部分や、「何を云っているのかよくわからないが、報告書とは異なる」と感じた部分は赤文字で表しました。『<音声なし>』の部分は、対応する音声を聴いたことがない部分であるため、文章は書きませんでした。『<音声>』の部分は、この後の3.2項でwavファイルを用意した部分です。また、コックピットの誰が発した言葉であるのか、私には確定できないため、あえて書きませんでした。
3.2 CVRの検証(?)
ここでは検証というほどの大げさなものではありませんが、CVRを聴いてみると「どうも報告書と違うな」と感じた部分をピックアップしてみました。まず時間を書き、その右側に事故調査報告書での記述をそのまま書いてあります(リンクがはってある場合は、その音声を聴くことができます)。その次に私がヒアリングした結果を書いてあります。どうぞ、3.1項のCVR全文も参考にしながら、一緒に考えてください。
18:24:38 (?)・・・・・
これは「まずい」だと想います。ただ私としては、「あ!」とか「何だ?」っていう言葉よりも先に「まずい」という言葉が出るのは少々違和感を憶えますが・・・。
しかし、角田氏の説のように、パイロット達が何らかの飛行物体の衝突を予測していたとしたら、その次の言葉として「何か爆発したぞ」というのはおかしく、「やっぱりぶつかったぞ」という感じになると想います。何らかの飛行物体の衝突説は否定しませんが、もしそうだとしたら、パイロット達がその飛行物体の存在には気付いていなかったと想われます。
18:24:43 (COP)ギアドア
私は以前からこの「ギアドア」のアクセントが気になっておりました(確かにこのような緊張状態ではアクセントがおかしくなるのも致しがたありませんが)。そこで、前の「スコーク77」と切り離し、何度も何度もスピードを変えたり聴いてみました。ここをクリックしてください。
「エルロン」と聴こえませんか?だからなんだ、という感じですが、一応参考までに・・・です。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
掲示板で千尋さんから「いれるぞ」ではないかという意見もあります。私もそう聴こえるとSUZANさんの掲示板で書き込みましたが、どうなのでしょうか。そもそも「スコーク77」のような信号を発する動詞として、「いれる」というのでしょうか。関係者(パイロットなど)の方のご意見を聴きたいですね。
18:24:43 (CAP)ギア見てギア (F/E)えっ (CAP)ギア見てギア
航空機関士の「えっ」は、もしかしたら副操縦士が発したかもしれませんが、「はい」に聴こえます。
また、機長の2回目の「ギア見てギア」は、はっきりと「ギア部、ギア部」と聴こえます。報告書では何故このような、いいかげんなヒアリングがされているのか不思議でなりません。
18:24:48 (F/E)オールエンジン・・・・・
これは、「ノンフィクション」でも検証していた部分で、結論は「ボディギア」ではないかということでした。確かに前後の会話を考えるとしっくりくる言葉だと想います。ただ、私には音的に「ボ」と「デ」の間に一音足りない気がします。私には、「オエンジニア」「オレンジニア」という感じに聴こえますね・・・。
「オレンジ・・・」="All Engine・・・"("L"+"E"="れ")という具合で、報告書には「オールエンジン・・・」としたのではないかと想います。
また、この言葉は7秒後(18:24:55)にも殆ど同じアクセントで発せられているため、たまたま聴き取りにくかったというわけではないということが分かります。パイロットの出身等の情報がないため、訛りとかの線も分からないですね。
18:25:55 (CAP)バンクそんなにとんなってんのに
最後に「ばか」と云っています。これは事故調の機長、副操縦士に対する配慮で削除されていたのでしょう。しかし、緊急事態ですので、このような言葉が出てしまうのはしょうがないと想います。
18:26:03 (CAP)バンクそんなにとるな マニュアルだから
前半部分ですが、これは「バンクとんな」だと想います。「そんなに」は云っていないと想います。
後半部分は、最初「間に合うから」に聴こえたのですが、何度も聴いてみたところ、報告書どおり「マニュアルだから」でよさそうです。ただ、このような状況で、マニュアル云々の会話が出るものか違和感を憶えます。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
非常にお恥ずかしい事ですが、これまで私は「マニュアル=取り扱い説明書」と認識しており、「機体特性として、『これ以上バンクをとるな』とマニュアルに書いてあるから、バンクをそんなにとるな」という発言であると想っていました。しかし、これは、オート(自動操縦)に対するマニュアル(手動操縦)ということですね。なんか、今頃気付きました・・・。
〜〜 追加(2005/09/26) 〜〜
ノイズの少ないデータを聞いてみると、報告書のとおりで正しいのではないかと思います。
18:26:41 (CAP)なんでこいつ・・・・・
最終報告書と時刻がずれていますが、中間報告で発表されたとおり「なんでこいつ鳴るんだ」でいいと想います。何故最終報告書では「不明」と書き直されたのかは疑問です。
18:27:50 (CAP)いや ロック
この箇所は正直、何を云っているのかわかりません。短く「ロック」と云ってるような気はするのですが。
18:29:00 (F/E)もってないかどうか聞いてみます
「おっこってるかどうか聞いてみます」だと想います。その後の機関士の「オキシジェンマスクおっこってますか?」(18:30:30)を考えるとしっくりすると想います。また、「聞いてみます」と云って、実際に聞くまでに約90秒もかかっていますが、事態への対処にそれだけ追われていることを意味しているのだと想います。
18:29:06 (COP)はい 気をつけてやります
「はい」は聴こえるのですが、その後は何て云っているのか、さっぱりわかりません。
18:29:07 (CAP)はいじゃないが
私には「はいじゃないわ」と聴こえます。もし、語尾が「わ」だとすると、名古屋弁のような気がします。果たして、コックピットの3名の出身はどこなのでしょうか。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
掲示板で「関西出身ではなかったか」という情報がありましたが、他にも情報もってらっしゃる方はいませんか?
18:30:39 (CAP)PO2ボトルちゃんとつけてください
なんといっているのでしょうか?「P・・・オキシジェンつけてください」といっているように聞こえます。しかし「PO2」とはいっていないと思います。
18:30:51 (CAP)・・・・・・
火災警報音に対して「いやだもう・・・」といっているのではないでしょうか。
18:33:37 (F/E)アールファイブのマスクがストップですから・・・・・
この「・・・・・」の部分ですが、よく聴いてみますと、「自動スイッチを切り」と云っています。従って、この時点で事故機は「自動スイッチ」なる物をオンにして飛んでいたことになります。その後、実際に切られたのかどうかはわかりません。これは「自動操縦装置」のスイッチのことなのでしょうか・・・?
機長はこれまでに何度も「ライトターン」「ディセント」を指示しているので、自動操縦装置は切っていたと判断されます。現に、DFDRを見ると爆発音直後に切られているようです。しかし、機関士は「自動スイッチを切」ることを提案しています。ということは再度スイッチが入れられたのでしょうか?確かに、29分09秒から操縦に関するやりとりがありません。しかし、DFDRには自動操縦装置を入れた形跡はありません。では、何のスイッチなのでしょうか・・・・。
また、機関士は「エマージェンシーディセント」を提案しています。機長はこれまで何度も「ディセント」を指示していますが、実際には爆発音のとき(24000フィート)と殆ど高度は変わっていません(ただ、この時、上下方向に大きな揺れが続いていましたが)。しかもその後、7分間降下する様子はありません。コックピット内にも差し迫った雰囲気でもないように感じます。
これは、(最終的には降下したいが)差し迫って降下する必要がない、つまり減圧による危険性がないと判断されたと考えられます。本当に今すぐ降下する必要があれば、コックピットはもっと大騒ぎになっているものと想います。また、その後の会話から分かるように、コックピット内では酸素マスクが使われていないようですし、CVRを聴いた関係者もマスクは使用されていないと判断していました。従って、乗客に被害がでるような減圧、ましてや急減圧というものは発生しなかったものと判断されます。この箇所は報告書が疑問視されている大きな理由のひとつであります。
18:33:51 (CAP)・・・・・
なんと云っているのでしょうか。副操縦士の「(マスクを)かけたほうがいいです」に対する応答でしょうか?
18:39:18 (CAP)はい、ちょっと待って
確かに後半は音的にはこのように聴こえるかもしれませんが、私はどうもすっきりしませんでした。何故なら、前半部分が「はい」に聴こえなかったからです。もし、報告書に「えーちょっと待って」と書いてあったならば、私は聴き流したかもしれません。
また、機関士の「ギアダウンしたらどうですか」という提案に対して、「出せない、ギア降りない」と答えています。これは、「ギアを降ろしたいが動かない」ということです。つまり機長は機関士の提案に賛成しているわけです。にもかかわらず「ちょっと待って」と答えるのは違和感がありました。そこで再生速度を少し遅くして何度も聴いてみました。ここをクリックしてください。
どのように聴こえましたか?私には「ゆーっくり出して」または「えーゆっくり出して」聴こえます。更にDFDRをみると18時40分あたりから機体の挙動に変化が表れており、何らかの操作がされたことを意味していると想います。従って、この言葉は「ゆーっくり出して」「えーゆっくり出して」でいいと判断します。これで、会話が噛み合いすっきりします。
18:39:55 (CAP)・・・・・・
前半は何をいっているのか聞き取れませんが、後半は「気合入れろ」といっていると思います。
18:40:10 (CAP)・・・・・・
「まだ出せない?」といっていますね。「オルタネート」でまだ「ギア」が出ていないことを尋ねているのだと考えられます。したがって、従って機長は「ギアダウン」を希望しているのであり、報告書のように「ちょっと待って」などといっていないことになります。つまり18:39:18の発言は「ゆっくり出して」で間違いないと考えます。
18:45:18 (CAP)ここでホールド・・・・・
何を云っているのかさっぱりわかりません。ただ、「ここでホールド」なんて云っていないことだけは確かです。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
「・・・どうぞ」に聴こえます。「どうぞ」というと無線で発言の最後につけて、相手の発言を求める(促す)ときに使いますよね(英語では"over"で、事故直後でしばしば使われています)。またこの前後に会話がしばらくないのも気になります。ということを念頭に聴くと「すぐ応答せよ、どうぞ」と聴こえるのですが、ちょっと強引でしょうか・・・?
いずれにせよ、最後は「どうぞ」「のうど」「こうど」に近い言葉ではないでしょうか。
18:45:46 (CAP)ジャパナ123アンコントロール
日本航空にこのようなセクションがあるのかどうかわかりませんが、「ジャパナ、セントラルコントロール」と云っているのではないかと想います。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
非常に興味深い事に気付いたのですが、報告書では18:53:31の後半部分も「ジャパンエア123アンコントロール」と聴きとっています。そこで両音声を聴き比べてみると非常に似ていることに気が付きました(って、既に気付いている方もいらっしゃるでしょうが・・・)。両者は同じ事を云っているのではないでしょうか。
両方とも「アンスイッチオンコントロール」のようにも聴こえますが・・・。とすると、この18:45:46は「ジャパン、アンスイッチオンコントロール」となり、最初の「ジャパン」の意味することがわかりませんね。
18:46:44 (CAP)ちょっと・・・・・・
ここは、聞いていて非常に悲しい気持ちにさせられます。33秒の「これはだめかもわからんね」の続きの言葉だと思います。私には下のように聞こえます。
18:46:44 (CAP)ちょっとわからんなぁ (COP)はい
18:46:47 (CAP)ちょっとどうなるかねぇ (COP)はい
報告書のように「もっとノーズダウン下げ」なんていってませんね。
18:47:52 (COP)ライトターンですね
ここは、ちょっと気になっただけです。確かに「ライトターンっすね?」と聴こえますが、イマイチ納得できないのでここにあげました。
18:48:32 (CAP)じゃ・・・・・できる?
何て云っているのでしょうか。次の副操縦士の「効きません」を考えると、何らかの操作が効くかどうか尋ねているのだということは推測できます。音だけでいうと「じゃバッシュできん」と聴こえるのですが・・・。
18:49:39 (CAP)あーだめだ・・・・・
「あーだめだ終わりだ」です。DFDRを見るとこのころ、機体が激しく上下左右に揺れています。
18:49:46 (CAP)はいこうど落ちた
よくよく聴くと、ここは「ハイドロが落ちた」と云っています。しかし、前後の文脈が噛み合いません。直前の「ストール」を考えると、報告書の「こうど落ちた」の方が、かえってしっくります。でも、私には「ハイドロが落ちた」と聴こえます。みなさんはどう想われますか?
18:50:32 (COP)今コントロールいっぱいです
ここは「今、レンジいっぱいです」に聴こえます。「コントロール」では音の数が全然足りません。中間報告の「舵いっぱいです」の方がまだ正しい気がしますが、何故報告書では「コントロール」と英語で表したのでしょうか。この時点では、スピードが減っており、失速の危険があります。そこで、直前の「頭下げろ」と直後の「マックパワー」を考慮すると、失速を避けるため、スロットルでパワーを最大にしている、つまりレンジをいっぱいまで操作している、ということを云っていると考えられます。
また、この「レンジ」の言葉に「ストール」という言葉がかぶっているような気がします。
18:50:50 (CAP)パワーでピッチは コントロールしないとだめ
これは自信がないのですが、私には「コントロール」と聴こえないのです。「インプット」に聴こえますが、どうなのでしょうか・・・・・。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
この箇所は掲示板に京田猛さんが意見を書き込んで下さっていますが、私はやっぱり「コントロール」と聴こえないのです。「パワーでピッチは***とーしないとだめです」に聴こえます。
また、「ピッチを上げる」「ピッチを下げる」というのは航空用語(英語)でなんていうのでしょうか。
18:53:31 (CAP)えーアンコントロール ジャパンエア123 アンコントロール
前半部分は「あーアンコントロール」で正しいと想います。後半は「ジャパンエア123」では全然音の数が足りません。音的には「あーピッチアンコントロール」か「あータッチオンコントロール」という具合に聴こえますが、そのような用語があるのかどうかはわかりません。
〜〜 追加(2001/01/14) 〜〜
18:45:46の箇所でも追加しましたが、意味はおいておくとして、発音が音的に似ていると想いませんか?「スイッチオンコントロール」か?
ちょっと長いです。聴きとりにくい箇所がいくつもあります。どれも何を云っているのかわからないです。ただ、その中でも、54分07秒の「レフトターン」は全然違って聴こえます。
18:56:02付近 ※報告書に出て来ない
何て云っているのでしょうか?『「ストールするぞ」と聴こえる』と云う人も多いです。確かにそう聴こえないこともないのですが、この時点、つまり墜落直前は、「フラップアップ」「頭を上げろ」から分かるように機体は下を向き、かなりのスピードがついています。したがって「ストール」はありえないと想います。
〜〜 追加(2001/01/12) 〜〜
「口答えするな」と聴こえるとおっしゃるダイスケさんの依頼を受け、スローの音声を掲載します。元の0.64倍の早さにしています。ここをクリックして下さい。確かに「・・・すんな」という感じに聴こえますね。
18:56:21付近 ※報告書に出て来ない
墜落直前です。「もーだめだー」と云っています。ここまで頑張ったコックピットの3人に敬意を表したいです
このCVRを聴くと私は涙なくては聴けません。無念だったと想います。「乗客と共に生きて帰ろう」と必死だったに違い有りません。彼らの命を無駄にするかのような事故調査報告書は許せません。再調査という目標に、私も微力ながら力になりたいと想います。